唐書輯校

呉玉貴撰『唐書輯校』(中華書局 2008年)

 『太平御覧』が引用する「唐書」は『旧唐書』との類似性が指摘されながらも、本文の異同や、『旧唐書』には存在しない文が多くあって(下の画像の、「唐書曰、蝦夷国、海島中小国也・・・」もその一つ)ちょっと厄介な史料だったのですが、この「唐書」は宋代に大幅な修訂が加えられる以前の『旧唐書』であると著者呉玉貴氏は主張します(12頁)。その当否はさておき、唐の歴史を語る一級史料であることは間違いなく、『太平御覧』所収2104条全てを集めて校勘を加えた本書は基礎的作業として重要な意味を持つことでしょう。一般にはあまり知られていないと思うので、注意を喚起する次第です。

――(画像は『太平御覧』巻782)顕慶4年(659年)10月に倭国の使者とともに「蝦夷国」の人が入唐。このことは中国側の史料では『通典』『唐会要』『新唐書』等には記録されていますが、現行の『旧唐書』には欠落していました。なお、年号「顕慶」が「明慶」となっているのは、唐の中宗の実名(諱)である「顕」字を避けて(避諱)、「明」字に改めたものです。