「子ども」「子供」について国会議事録を検索してみたよ(1)

「子ども」やめ「子供」 文科省あえて漢字表記

(中略)これに対し、今年3月の通常国会で、自民党議員から「小学生は『子供』と学んでいる」「(漢字とかなの)交ぜ書きは国語を破壊する」などの指摘があったため、本年度に入って省内で協議した。

http://kumanichi.com/news/local/main/20130830002.shtml

 こういう時は、拙ブログでもたびたび紹介した、国会会議録検索システム を使うといいよ。これは皆もっともっと活用すべきだよ。国会で議員や官僚や参考人が普段何を議論しているのか知らないままに政治を語っている人が多過ぎやしませんか?
 「今年の三月」ということなので、検索条件入力画面にて、「開会日付」のところを「平成25年03月01日」から「平成25年03月31日」にして検索。その結果、この問題に関係ありそうな討論が1件ヒットしました。平成25年03月27日の衆議院文部科学委員会における、河村潤子参考人木原稔委員(自由民主党議員)との討論です。

○木原(稔)委員 もうきょうは三月二十七日ですから、すぐ新年度がやってまいりますので、迅速な対応を求めていただきたいなと思います。適正な、法律違反ではない形で決着をしていただきたいなということを強く要望しておきます。
 続きまして、教科書の中のいわゆるまぜ書きについて、簡単に触れさせていただきます。
 新しい委員の先生もいらっしゃいますので、このまぜ書きについて、参考人の方から説明を願います。

(発言番号030)

○河村政府参考人 まぜ書きについてのお尋ねでございますが、仮名と漢字をまぜて表記をする、いわゆるまぜ書きについては、読み取りが困難になったり、言葉の意味が把握しにくくなったりする場合には避ける必要がございますけれども、そのような事情がなければ、必ずしも問題があるとは言えないというふうに考えております。
 文部科学省で公用文を作成する上での参考とするために、一般に留意を要する用字、用語の標準を示しました文部科学省用字用語例というものを作成いたしておりますが、この中でも、例えば、子供という言葉の書きあらわし方としまして、「子供」という漢字二文字の用例を示す一方で、漢字書きで示した言葉についても、場合によっては仮名書きにしても差し支えないということを明記している次第でございます。

(発言番号031)

○木原(稔)委員 まぜ書きについて説明がありました。
 子供についてちょっと踏み込んで発言をされましたけれども、幾つもまぜ書きがあるんですけれども、平たく言うと、例えば、小学校の各学年で習う常用漢字は各学年ごとに決まっておりますので、その過渡期の教科書においては、まぜ書きというのは発生するものだと思われます。しかし、私としては、まだ習っていない漢字でも、ルビを打つことによって、将来、子供たちにそれを予想させて前もって予習させるということもいいのかなというふうには思っております。
 子供というのはまた別の話なんですね。これは、子供の「子」というのは小学校一年生で習う常用漢字であります。「供」という字は小学校六年生で習うわけであります。それが合わさって子供となると、なぜか「ども」の部分を平仮名で書くということが起こっております。何を根拠にそういうことをしているのかなと。
 今、学習指導要領の説明にもありましたけれども、特に合理的な説明というのはないなと私は思いますし、あとは、これは我々も反省しなきゃいけないのは、今、法令でも子供というのは全て「ども」は平仮名で書かれているんです。
 例えば障害者なども、そういった、いわゆる人権団体の方が意図的に「害」という字を平仮名で書くという例はありますが、法令では「害」という字は漢字のままです。
 しかし、「子ども」に関しては、これはなぜかもう既に平仮名になってしまっていて、国の法令がそういうものですから、地方自治体の条例も今もう全て「ども」が平仮名になってしまっており、さらに学校の教育現場も、またPTAの方々が配る資料とか、全て「ども」が平仮名になっていて、一部の意見で漏れ聞くところだと、子供の「供」はとても差別的な漢字だというような意見もありますが、では、小学校六年生にその差別的な漢字を教えているのかということにもなります。
 そのあたりに対して、何か感想なり御意見なりがあればお伺いしたいんですが。

(発言番号032)

○河村政府参考人 子供に関してでございますけれども、子供の「子」だけを漢字にして平仮名「ども」とか、あるいは全部「こども」という平仮名で表記するということの理由についてでございますけれども、これはいろいろな御意見があります。例えば、「供」という字が、お供というときに使われる言葉であるので、子供が大人の付随物であるように見えるのは好ましくないというような御意見をおっしゃる方がいましたり、また「子供」というのを両方漢字で書くと大変かたいイメージになるという御意見もありましたり、また発達心理学や児童心理学の専攻の分野では漢字の「子」と平仮名の「ども」という組み合わせが長年使われてきたというような、その分野での状況もあるというふうに認識をいたしております。
 まぜ書きの考え方につきましては、最初に申し上げましたように、読み取りが困難になったり、語の意味を把握しにくくなったりする場合には避ける必要があるけれども、事情に応じて、必ずしも全てが問題であるとは言えないというのがこれまでの常用漢字表等についての考え方でございます。

(発言番号033)

○木原(稔)委員 いろいろな御意見があるのは、それはそうだと思いますが、でも、誰が何の権限を持って、いつからそういうふうになったのかというのが明確でないですし、この問題はもう文科省文化庁に聞くだけの話ではないと思いますから、法令が全てそうなっているということですから、そのあたりのことはこれから私もちょっと追求していかなきゃいけないな、調べていかないといけないのかなと思っております。
 この問題はきょうはここで終わります。
 時間的なこともありますので、続きまして、高等教育政策について、大学の問題に移ります。
(以下略)

(発言番号034)
 この一連の流れを御覧になって、みなさまどう感じたでしょうか?新聞記事の印象とだいぶ異なりませんか。
 政府側の意見としては、誤解が生じるならともかく、それ以外は漢字と仮名をまぜて書く場合もあっていいのではないか、と、常識的なことを言っているわけです。「おみお付」を「御御御付」といちいち書く必要はないだろう、書いてもいいけど、という立場ですよね。
 それに対して木原議員は2つの点を指摘します。はじめに、「子」は1年生で学習するけど「供」は6年生の漢字なので、それまでは表記は「子ども」になってしまう。でも、「供」はどうせ学ぶのだから、「子供」と書いてルビを振ればいいのではないか、という主張です。つまり、これは「子供」に限った話ではなく、漢字教育に弾力性を持たせろ、という一般論です。
 次に述べているのが「子供」に直接関わる問題で、「子」も「供」も常用漢字として習うのに、なぜそれが組み合わさると「子ども」になってしまうのか。大人が作る法令でもそうなっている。これに合理的な説明はあるのか。そして、「誰が何の権限を持って、いつからそういうふうになったのかというのが明確でない」という問題提起をしているわけですね。こちらもまったく正当な主張だと思われます。
 いかがでしょうか。木原委員は、たしかに「子ども」ではなくて「子供」表記を推進する側だというのは間違いありません。しかし、「いろいろな御意見があるのは、それはそうだと思います」と反対意見に一応は敬意を表わし、しかも、記事にあるような「交ぜ書きは国語を破壊する」などという乱暴な表現はどこにも見当たらず、どうしてそうなったのかという経緯が知りたいので調べなきゃ、と言っているだけです。
 そもそも、今年の議事録の範囲において検索語指定で「国語 破壊」「日本語 破壊」を検索してもヒットするものはありません。
 もちろん、この発言が、本会議や委員会以外の場所、つまりこのサイトで検索できないところでなされた可能性もあります。だとすれば、今日の私の記事は何も意味を持たないわけですが、新聞としてはそのソースをきちんと示すべきだと思います。