「伝統」とはなにか

 例のようにネタですが、どれほどの期間あるもの・状態が継続すれば「伝統」として扱われるのか。みなさんはどうお考えですか。
 決まった定義があるわけではもちろんなく、人によってだいぶ開きがあるでしょうけれども、だからこそ日本人の平均的な「伝統」観というか、平均値・中央値・最頻値が知りたい。どなたかアンケート調査してくれないでしょうか(あるいは、もうあるのかな)。
 「〇〇は近代に創られた『伝統』」という言い回しは、世間で信じられているよりも〇〇は新しい、人工的に作りだされた慣習や制度であるということで否定的に用いられるわけですが、仮に明治時代に突如あらわれて定着したものであれば、それは百年以上前のものであり、世代でいえば、四、五世代。十分に「伝統的」なのではないか?とも思うわけです。
 どうやら、〇〇の古さが偽装される際に問題が生じる(そしてそれが論文等のタネになる)ようなのですが、正直な場合はどうなのか。創業以来百年を超える店が「老舗」を名乗り、「伝統の味」を喧伝しているところに「いやいや、所詮は近代以降にできた味」と言い放てば相手は気を悪くするでしょう。というか、そういう客がいるとは思えない。
 もうひとつ「伝統」で問題になるのは、「〇〇自体は伝統的なものであるが、今見るかたちは近代に創られたもの」の類。こちらは〇〇が古来不変であると偽装される際の問題で、世代数とは別問題なのでここでは取り上げませんけれども、やはり気になる。たとえば、鎌倉時代に幕府の重要行事として出現し、室町時代に突然廃れ、口伝などの手がかりがほとんどないままに吉宗が復興させた流鏑馬はいつからの伝統ということになるのか。当事者たちにかつての正統を伝えているという意識があり、周囲もそれを受け入れていれば古くからの伝統を名乗る資格がある気もするのですが(そもそも、先代と全く同じやり方の伝統行事など存在しないでしょう)、いろいろな意見があるはず。