活字体のように書く必要はあるのか――「結」の場合

 こういうことでテレビ局にわざわざ電凸して文句を言う人たちの気が知れない。

 「テーマになった『団結』の文字について、かなりの問い合わせが来ていたようです。フジの番組が団結し、視聴者とも団結するという趣旨で、総合司会のタモリさんが自ら筆でしたためた。出演者のTシャツにもあしらわれている。これが物議を醸したのです」(関係者)
 多才なタモリだが、書は得意ではないようだ。かつて「笑っていいとも!」で習字が話題になったときは、「全然やっていない」と話していたし、ゲストの書家・武田双雲に「なるほど」「すごい」と感激していた。
 「そのせいなのか分かりませんが、結のつくりが、上が短く下が長くなっているのです。よく見ると、『吉』バージョンのTシャツを着ている出演者もいたのですが、『文字が間違っている』というクレームが多かった。現場では、『タモリさんのデザインなので……』と釈明していたそうです」(前出の関係者)
 辞書などによると吉は俗字。
 書道では意図的に「吉」を使う場合もあるそうだが、「紛らわしくても、いいとも」と思った視聴者は少なかった?

http://gendai.net/articles/view/geino/137757

 この人たちは『千字文』の習字からやり直したほうがいい。

(国宝「真草千字文」、岩波文庫千字文』445頁)
 そもそも、毛筆で書かれた、または、石に刻まれた名品に見られる「結」の字のうち、活字体のように上の横画が長くなっているものなどほとんどありません。

(『書道大字典 下』1711頁)
 「タモリさんのデザイン」なのでも「意図的」でも何でもなく、それが普通というか伝統的には標準とする形なのです。
 こんな例はたくさんあります。活字体の形をもとにして字があってるだの間違っているだの言うのはやめたほうがいい(言っている本人のほうが恥をかく場合が多い)。人の字を嗤う暇があったら、多くの書に目を通すべきでしょう(←これは自戒を込めてのことです。念のため)。
 【追記】参考:変わったかたちの顔真卿の楷書 - Cask Strength